After Aqours 3rd Saitama PART 2: Dialogue in Pianoforte 2nd movement
前回のあらすじ
Aqoursでの推しーー逢田梨香子の「音楽力」について語るシリーズを始め、パート1では逢田さんのボーカルを見て、パート2では「ピアノ」に因んだ話をしていたのだけれど、パート2の前半「1st movement」では桜内梨子のソロ曲「Pianoforte Monologue」、および3rdライブで行われた初披露から見えた「Pianoforte Monologueという『特例』ーー「Pianoforte Monologue」の次元事情とそれに繋がっていると思われている原因、それらで構成されたステージ-世界-について少しだけ語らせてもらった。
「Pianoforte Monologue」のステージを構成する表面的な要素と内面的な要素で、そしていつもと違うボーカルの声質といつも通りの「跳ね」処理が組み合わせたその5分のあいだに、逢田梨香子と桜内梨子の境界線はいつも以上にかなりぼんやりとしていて、次元の壁を超えた世界に観客を見事に引き込んで行って見せた。
詳しくは前の文章へどうぞ。
さて、1st movementを終えたところで、ここから2nd movementに入り、「ピアノ演奏とその他のことから視える耳の話」について少しだけ語らせていただきたいと思う。
1st movementを出してから約四ヶ月も経ってしまい、長く待たせてしまったこと(待っている人がいればという話にもなるのだけれども)に申し訳ないなぁとも感じつつ、この四ヵ月があったからこそ新しい発見もできたということで、前から思っていたことをも含めてこの文章にまとめたいと思う。
また、今回は本当に推測でしかないの内容になっていて、もしかしたら全部間違っているかもしれないが、それでもこんな戯言に「付き合ってやるよ!」と思っている暖かい方がいれば、ぜひご一読をどうぞ。
Dialogue in Pianoforte 2nd movement: 耳見観耳(みみみみみみ)
最初に「もしかして耳が良いのでは?」と思ったきっかけは、やっぱり1stライブ時のピアノ演奏だったが、1stライブのピアノ演奏以降もそう思わせてくる出来事があって、それらを一つ一つなるべく簡単の述べて行こうと思う。
1. 「想いよひとつになれ」のピアノパート
楽器経験ゼロ、楽譜知識もゼロの大人が、三ヵ月であのような演奏をやり遂げたのは、私はよく「情熱と覚悟と努力が成せた技」と言っているのだが、そういう感情的な物とは別の、実際のことをも考えてみて、本当は練習の質、練習頻度、ピアノ先生の素質、教え方、ピアノ稽古のスケジュールなどなどを考慮に入れるべきだったのだが、あいにくそれらの情報を手に入れる術がない。
その代わりに、私は単純に逢田さんが弾いた「想いよひとつになれ」のピアノパートは何だったのか、1stのあの演奏を完成させるために何が必要だったのかを見てみた。
a. シンコペーションの読譜ができる能力、および処理ができるリズム感
「想いよひとつになれ」のメロディーはともかく、伴奏ではシンコペーション、いわゆる「拍子を食う」が多い部分もあり、弱拍が強調されたリズムを把握するのは容易い仕事ではない。
4拍子であるこの曲では、4分音符で構成される拍子が一番把握しやすく、脳内でちゃんとカウントすればまずはズレることじゃないが、伴奏では8分音符かつ弱拍が強調されるパターンが多く(もっともわかりやすい例を上げると、二番サビ以降のピアノのソロライン)、初心者が油断するとロストしてしまうリズムだ。
初心者である逢田さんだから、まずは耳コピで想いよひとつになれのピアノパートを割り出すことは無理に近いだろうし、実際の楽譜から覚えるのもまずは楽譜を読めるようにならなければ始まらなかったし、覚えたところでシンコペーションのリズムとパターンに慣れて実際に指先を動かしてそれをアウトプットにする必要があって、正直三ヵ月にしては行う工程がありすぎたとは思った。
b. 多くの楽器の中でピアノアレンジをハッキリと意識・認識できる能力
ライブ当日だけでなく、BDでも確認したけど、逢田さんが弾いているピアノは決してただのメロディーではなく、想いよひとつになれのインストルメンタルの中のピアノアレンジだった。
あまりにも衝撃的で、2日目の公演が終わって帰宅した途端私もインストルメンタルでピアノアレンジを割り出してみたが、あまりにもピアノがインストルメンタルに溶け込んでいて割り出せない所が割と多かった。
練習も本番もイヤモン付けたか否か(付けた場合再生された内容はもちろん不明)、それがわからないのだが、まず暗譜の状態で演奏するのであれば、それほど楽譜をはっきりと記憶し、その上インストルメンタルの中にある楽器に合わせて演奏する必要があった。ピアノ経験をある程度所有している方であれば割と大した困難を経験せずに演奏できると思うが、ピアノ初心者だとより強く意識しないとロストしやすいじゃないかなと私は推測している。
c. 暗譜能力
気付いている方は多いと思うが、あのピアノ演奏に楽譜などは使われなかった。
上述にも少しは言及したのだが、暗譜できるようになるためにはまずは読譜から始めなければならないし、8分音符にシンコペーションに所々メロディーと揃っていない伴奏を覚えるのが「想いよひとつになれ」のピアノパートを完成させる条件であり、その条件を満たした上で全部暗記するのが今回のミッションだったのだろう。
ピアノの読譜では他の楽器にない難しさがあって、それは左手と右手のそれぞれの楽譜を同時に読み取ることだ。その上、楽譜に書いてある楽句の演奏の仕方を理解して、両手をそれに合わせて動かすーーそれがピアノという楽器を演奏する時の最大の困難の一つだった。
実際、暗譜というものはおそらく人それぞれ違うのであろうが、ある程度練習を重ねれば体が勝手に覚えてくれる。また、ピアノを長く弾いている方々なら、レベルはそれぞれ違うが鍛えてきたセンスで暗記したり、途切れたパートを自然に聞こえるように繋いだりすることもできるが、それはあくまで長く弾いている方々の話で、初心者ではやはり地道に練習を重ねて体に覚えてもらった方が効率的であろう。
少し難しい話を多めに話したが、とても簡単にまとめると、三ヵ月で本当の0から「想いよひとつになれ」ピアノパートを完成させるまで必要な工程が多すぎて、それも初心者がやり遂げたミッションだったということ。
3ヵ月内で楽譜読み、楽譜暗記、ピアノの演奏仕方、両手のコーディネーション、ペダルの使い方、それら(とその他にあるのであろう工程)を全部覚えるのはあまりにも大変だが、このミッションにおいてひとつだけ助けになる現実があったーー「想いよひとつになれ」という曲は元から完成されて、それを聞き込むことで多少はミッションの難易度を下げることができるはずだ。
個人の意見だが、具体的に何を聴けば学習の助けになるというと、
-ドラムとベースで作られたリズムと「ノリ」
-ボーカルメロディーと交差する楽器(特にピアノ)の旋律
この二つに集中して聞き込みことで、ピアノパートはそれらとどのように「交流」しているかが見えてきて、ただの「音を奏でる」ことではなく、「曲の一員として動く」意識が少しでも出来上がるはず。
それでもこれらは決して簡単なことではなく、「想いよひとつになれ」という曲はやっぱり初心者では少し苦戦してしまうリズムが結構あった。
だからこそ余計に思ったーーメロディーに揃ったリズムではなく、伴奏として独自でありながらも他の楽器に合わせているピアノパートの習得(しかも暗譜状態)を3ヵ月でやり遂げたのは、その身体に潜んでいるリズム感と音感があるとは多少関係があると私は思った。ただ「想いよひとつになれ」のメロディーを熟知しているだけじゃダメだーー楽器の役割、ノリと動き方をある程度意識できるようになる、それができてからようやく「想いよひとつになれ」の編曲に対面できたと思うし、どこまでだったのかがもちろん私ではわからないが、初心者で3ヵ月であれほどのことができたのはリズム感と音感は一定のレベルにあるのではないか?と推測している。
2. 「君の瞳をめぐる冒険」のハーモニー歌唱
3rdライブツアーで初めて披露された「君の瞳をめぐる冒険」からは、いろんな衝撃とサプライズを受けて今でもすごく印象深いが、その一つ本当に驚いたのは逢田さんによるハーモニー歌唱だった。
梨子ちゃんの歌唱から始まり、そのあとヨハネのパートに切り替わったが、埼玉の時はおそらく会場が原因ではっきりとは認識できなかったが、大阪の時はようやく逢田さんが小林愛香さんの歌をハーモニーで支えていると気付いたのだ。
ちなみに歌っていた部分は「暗闇照らすように声」と「つながるはずと信じたら」だった。
ハーモニーの歌唱の難点は、もっとも明晰にされるメインメロディーに釣られて音程がずれてしまうところであり、おそらくメインメロディーより低いハーモニーの方が難しいのであろう。
逢田さんが担当したハーモニーは全部メインメロディーより音程が三度高く、低い方よりはやりやすいのであろうが、それでもCD音源に匹敵できるほどの安定度を出せたことに私はすこし驚きを覚えたーー得意音程じゃなかったか、緊張が原因だったか、実は梨子ちゃんのメインメロディーを歌う時は安定感が少しだけ下がっていたが、それと逆にハーモニーの安定感がトップクラスだった。
ハーモニーを正確に歌うためには、ハーモニーへの集中力=意識を強く持ち、歌っている時は自分が支えているメインメロディーとは同調しているかどうかを聞く必要があると私は思うが、CD音源に匹敵する安定感のあるハーモニーをできたということは、その二つの条件を見事にクリアできていたということなのではないかと私は思う。
3. School of LOCK! Aqours LOCKS! 2018年9月5日放送分の「おすすめ曲対決」でのアカペラ歌唱
School of LOCK!(SOL)のコーナーで、高槻かなこさんと一緒におすすめする曲で対決を行った時、逢田さんは高槻さんの「ときめき分類学」に対抗し、「君の瞳をめぐる冒険」を一句だけ歌ったが、キーはともかく、音程は見事だった。
音程(Interval)というのは、それぞれの音の「間隔」であり、間隔、または距離を正しく発することができればちゃんと「ドレミファソラシド」として認識させることができる。
逢田さんが当時歌った歌詞は「謎を謎を解いて」で、その歌詞は最初のサビ、または二番サビの3行目で、キーはどっちもD Minor(ニ短調)だったが、逢田さんが歌ったキーはC minor(ハ短調)だった。ところが、オチサビ前の「謎を謎を解けば ひとりじゃないよね」のキーは実はCメロ(「知らないことがいっぱいで…」)と同じのC minor(ハ短調)だった。
この現象には二つの解析ができ、
a. 逢田さんはサビを歌うつもりだったがキーがずれて(下げて)しまった
b. 逢田さんはオチサビ前のところを歌うつもりだったが歌詞を間違えてしまった
この上のどっちかになると思うが、当然それは知るすべもなく、ましては本人に伺うことも叶わないのであろう。ただどちらにせよ、伴奏なしでも音程を正確的に把握し歌えたことはまた素晴らしい能力、あるいは「結果」だったと思う。
ちなみに仮にその現象が発生した原因はbであった場合、「絶対音感」持ちという可能性をかすかだが視野に入れてもいいと、推しへの「贔屓」をも込めて私は思っている。
4. School of LOCK! Aqours LOCKS! 2018年9月5日、10月1日及び10月3日放送分の楽曲イントロクイズでの反応速度
同じくSOLで行われたイントロクイズでは、逢田さんの楽曲に対しての熟知度と反応速度を覗けるが、9月5日でのvs高槻さん対決は、最初の再生ではわからなかったのが、2回目の少しだけ伸ばした再生では即時に正解(「No.10」)がわかり、見事に勝利を手に収めた;さらに10月1日の放送分では、高槻さんvsリスナーの対決で裁判を勤めながらも、高槻さんもリスナーさんもぱっと浮かんでこなかったあの曲(「夢で夜空を照らしたい」)を1回目の再生ですでにわかったという、かなりすざましい速度で反応できた(裁判だったから答える権利はなかったのが少し残念だったが)。また、10月3日でようやく逢田さんvsリスナーの対決が行われて、一問落としたが二問正解(「届かない星だとしても」と「未熟DREAMER」)でAqoursを続けてくれることになった。
本家のメンバーの一員であり、楽曲に対しての熟知度が高くなかったらいろんな意味でまずいだろうけれども、もっとも注目すべきは「夢で夜空を照らしたい」への反応速度だったーー実際に流れたイントロの部分の長さは約0.21秒で、ベースのスライドとオープンハイハットの音だけが含まれて、しかもベースの音もかなり低くて音程の判定しつらいところにあり、つまり音程からの判断材料がほとんどなかった状況でもちゃんとあの一音を「夢で夜空を照らしたい」だと即時に認識できた。
「耳がいい」というのは音程の把握のみにあらず、「音」と「リズム」と「音声」の把握もその一つで、少し時間差で思い出すことも可能だと思うが、他の楽曲はともかく「夢で夜空を照らしたい」のあの音で即時わかったのはなかなかの実力だと思う(「夢で夜空を照らしたい」に近いイントロをしているAqours楽曲はそこまでないのも確かなのだが)。
まとめ
今回は難しいかつ推測でしかない話を長く語ってしまったのだが、要するにピアノ挑戦に必要だった工程と結果、イントロクイズでの反応速度、そして普段のボーカルとは少し異なる歌唱から見て、もしかしたら逢田さんの音とリズムに対しての把握は平均よりハイレベルなのかもしれない。
そして、ここでようやくピアノにまつわるあれこれをDialogue in Pianoforteの二部文章として終えることができ、書いているうちに自分にもびっくりな発見があり、推しやその音楽力に対していろいろと考えることもできて素直に楽しいと思った。
次回の文章はおそらくこのシリーズの最後の文章になり、そこでは少しだけ個人感想混じりの話がしたいと思う。
Coming up next: After Aqours 3rd Saitama PART 3: ???